THE iDOLM@STER 長編::伊織の再出発
激震(3)
翌日、山本は社長室に呼ばれて、唐突に最終決定を通告された。
「…いま、なんて言ったんですか、社長」
「二度も言わせないでくれたまえ。ハルモニアから水瀬君をはずしたまえといったんだ」
あまりの衝撃に、しばらく口が聞けない山本だったが、ようやくのことで声が出た。
「理由をお聞かせください。まさか、久徳の記事が原因じゃないでしょうね」
「それ以外に何がある?」
「あんなくだらないゴシップに屈するんですか!?」
「すでにくだらなくはない。私と水瀬、父親の方の水瀬だが、彼との関係があのように書かれてしまった以上、765プロにとって伊織君を継続プロデュースすることは害でしかない。先方にも多大な迷惑をかけることになりかねない」
やはりそこか、と山本は思う。しかし。
「…伊織はきちんとオーディションを受けて、アイドル候補生となったんでしょう!あんな記事事実無根じゃないですか!」
「むろんそうだ。Aランクにあがったのだって、彼女の実力だ。しかし、世間はもう、そうはみていないのだよ」
「きちんと申し開きをすれば、聞いてくれる人だっています!」
「もはやその段階は過ぎ去ったのだよ。
今や嫌疑は765プロ全体にかかってしまっている。そうである以上、伊織君をかばってこのままもろともに沈むわけにはいかない。
私は社長として、所属アイドルはもちろんのこと、社員・アイドル候補生たちを守る義務がある」
わかる理屈だ。その守られる中に、自分自身が入っていることもわかっている。けれど。
「だから伊織はもう守れないと言うんですか!?」
「そうだ。私としても断腸の思いなのだ。理解して欲しい」
理解はできる。しかし、承諾するわけにはいかない。
もう理屈など組み立てられなかったが、ようやくのことで声を絞り出す。
「…ダメです。俺のハルモニアには伊織が絶対に必要なんです。それはユニット結成時にきちんと説明したでしょう!」
「忘れてはいない。だが、状況が変わったのだとしか言いようがない」
社長の声はどこまでも苛烈で、今まで感じたことのない様な厳しさを含んでいた。
お互いの立場と守るべきものが、互いの目から視線をはずさせなかった。
しばらくの間にらみ合いが続いたが、社長は絞り出すように、山本に言った。
「…きみに、職務命令の形で、決断を迫りたくはない。頼む。わかってくれ」
「…」
山本は視線をそらして、社長室を後にした。
「山本君!」
社長の声が追いかけてきた。
山本は短く、「はい」とだけ、背中ごしに社長に言葉をぶつけて、ドアを閉めた。
山本は乱暴に廊下を歩きながら、頭をかきむしる。
しかし、有効な解決法が思いつかない。
『…少し喫茶店にでも行って、気持ちを落ち着かせてこよう』
そう思って、コートを取りに事務室に寄ると、小鳥が声をかけてきた。
「山本さん、ハルモニアの新曲、届いたわよー。ほらっ」
「今更…」
言いかけたとたん、山本の頭が猛烈な勢いで回転を始めた。
小気味よい音を立てて、プロデュース計画が組みあがっていく。
「…それだっ!小鳥さん、ありがとう!!!」
「え、な、なにが?」
「いや、とにかくありがとう!」
「い、いえ、どういたしまして…?」
「…いま、なんて言ったんですか、社長」
「二度も言わせないでくれたまえ。ハルモニアから水瀬君をはずしたまえといったんだ」
あまりの衝撃に、しばらく口が聞けない山本だったが、ようやくのことで声が出た。
「理由をお聞かせください。まさか、久徳の記事が原因じゃないでしょうね」
「それ以外に何がある?」
「あんなくだらないゴシップに屈するんですか!?」
「すでにくだらなくはない。私と水瀬、父親の方の水瀬だが、彼との関係があのように書かれてしまった以上、765プロにとって伊織君を継続プロデュースすることは害でしかない。先方にも多大な迷惑をかけることになりかねない」
やはりそこか、と山本は思う。しかし。
「…伊織はきちんとオーディションを受けて、アイドル候補生となったんでしょう!あんな記事事実無根じゃないですか!」
「むろんそうだ。Aランクにあがったのだって、彼女の実力だ。しかし、世間はもう、そうはみていないのだよ」
「きちんと申し開きをすれば、聞いてくれる人だっています!」
「もはやその段階は過ぎ去ったのだよ。
今や嫌疑は765プロ全体にかかってしまっている。そうである以上、伊織君をかばってこのままもろともに沈むわけにはいかない。
私は社長として、所属アイドルはもちろんのこと、社員・アイドル候補生たちを守る義務がある」
わかる理屈だ。その守られる中に、自分自身が入っていることもわかっている。けれど。
「だから伊織はもう守れないと言うんですか!?」
「そうだ。私としても断腸の思いなのだ。理解して欲しい」
理解はできる。しかし、承諾するわけにはいかない。
もう理屈など組み立てられなかったが、ようやくのことで声を絞り出す。
「…ダメです。俺のハルモニアには伊織が絶対に必要なんです。それはユニット結成時にきちんと説明したでしょう!」
「忘れてはいない。だが、状況が変わったのだとしか言いようがない」
社長の声はどこまでも苛烈で、今まで感じたことのない様な厳しさを含んでいた。
お互いの立場と守るべきものが、互いの目から視線をはずさせなかった。
しばらくの間にらみ合いが続いたが、社長は絞り出すように、山本に言った。
「…きみに、職務命令の形で、決断を迫りたくはない。頼む。わかってくれ」
「…」
山本は視線をそらして、社長室を後にした。
「山本君!」
社長の声が追いかけてきた。
山本は短く、「はい」とだけ、背中ごしに社長に言葉をぶつけて、ドアを閉めた。
山本は乱暴に廊下を歩きながら、頭をかきむしる。
しかし、有効な解決法が思いつかない。
『…少し喫茶店にでも行って、気持ちを落ち着かせてこよう』
そう思って、コートを取りに事務室に寄ると、小鳥が声をかけてきた。
「山本さん、ハルモニアの新曲、届いたわよー。ほらっ」
「今更…」
言いかけたとたん、山本の頭が猛烈な勢いで回転を始めた。
小気味よい音を立てて、プロデュース計画が組みあがっていく。
「…それだっ!小鳥さん、ありがとう!!!」
「え、な、なにが?」
「いや、とにかくありがとう!」
「い、いえ、どういたしまして…?」
| Copyright 2006,03,15, Wednesday 12:23am 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |