THE iDOLM@STER 長編::伊織の再出発
激震(2)
伊織がその朝、いつもハルモニアの待機場所にしている事務室についたとき、すでに残りの二人は到着していた。
「おはよー、あずさ、真」
普段通りに挨拶すると、何とも言えない表情をした二人が、こっちを見返す。
怪訝に思い、伊織は理由を聞くと、真が少し迷いながらも、週刊誌を差し出した。
ページをめくると、伊織の父と社長の関係から、765プロに伊織がコネで入ったこと、そこで行われた金銭の授受や、その使い道などといったことが一部の事実が悪意でもってゆがめられた想像で補完されてつづられていた。
軽い衝撃を受けるが、以前ほどの衝撃は受けなかった。
「…まったく。よく調べたもんよね」
伊織はムカムカしながら、週刊誌を机の上に放り出す。
真はその様子を見て、心配そうな視線を投げ返してきた。
「何よ。変な顔して。ショックなんか受けてないわよ。腹は立つけどね」
「そっか…ならいいんだけど」
「うん。自分でも不思議なんだけどね」
あずさがにっこりと笑って言う。
「伊織ちゃんが、自分自身でこれがホントじゃないってわかってるから、よね〜」
「そうなのかな…自分ではわからないけど」
しかし、ショックはなくても気になることはある。
「…けど、ファンはそうじゃないかもしれないわね」
「そうねぇ〜…私たちではどうにも出来ないかも〜」
3人でため息をついたとたん、事務室のドアがいきなり開いた。
振り返ってみると、山本がそこにいた。
「プロデューサー!」
真が、安堵半分、不安半分のような、微妙な声で叫んだ。
山本が机に目をとめて言う。
「ああ。例の記事、読んだようだな…手間が省けた。説明しようと思ったところだ。
記事への対応に関しては、今協議中だ。
今のところ、テレビのワイドショーなどが食いついてくる様子もないので、まあ、状況はそれほどひどくない。
とりあえずは、俺たちは俺たちの仕事をきっちりこなしていく、ということだけ考えていればいい」
3人は顔を見合わせる。
「記者会見とか、ひらくわけ?」
伊織が問う。
「その可能性もある。けど、世間の反応次第だ。
ただ…正直に言うと、今回は社長と水瀬氏…伊織のお父さんだな、彼との関係が取り沙汰されている…
このことで問題が若干ややこしくなっているのは事実だ」
「ふーん…」
その言葉を聞いて、伊織は目を伏せる。
お父様と社長の関係はどうでも良いが、コネで成功をつかんだと言われるのは悔しかった。
「伊織。悔しいか?」
ズバリ心情を言い当てられて、さらにむかっ腹が立った。
「…あんたね。オブラートにくるむって言葉知らないのッ!?」
飛びかかろうとした伊織を見て、真が止めに入ろうとしたが、それをあずさが制止する。
伊織が山本相手に「ストレスを発散」させていると、頃合いを見てあずさが止めに入った。
「伊織ちゃん、それ以上はダメよ〜」
「はぁはぁ、なによっ!」
「プロデューサーさんが死んじゃうわよぅ〜。落ち着いて〜、ねっ?」
その言葉を聞いて少し落ち着いた伊織は、山本に向かって言う。
「まったくっ!言葉を選ぶってことをちょっとは覚えなさいよねっ!!」
「は、はひ…」
ぼろぼろになった山本が、伊織の方を見ずに返事する。
「立ちなさいよ、ほらっ!」
伊織が手を差し出すと、その手にすがって山本が立ち上がった。
「あたた…相変わらず伊織は容赦がないな…」
「あんたがよけいなことを言うからでしょっ!ホントに学習能力のない奴ねっ!」
伊織がそっぽを向いて答えると、あずさがすかさず言った。
「じゃあ、レッスン場に行きましょう〜」
「ああ、そうだな。じゃあ今日はダンスレッスンだ。第2レッスン室に5分後に集合」
レッスン室に向かう道すがら、真があずさに問いかけた。
「ねえ、あずささん。どうして、伊織を止めようとしたボクを止めたんですか?」
「ん?ふふふっ。あれは、プロデューサーさん、わざとああいったのよ〜」
「え?ど、どういうことですか?」
「わかんない?きっと、真ちゃんにもわかると思うわよ〜。
だって、伊織ちゃんはわかってるもの。ね?」
伊織はしばらく黙っていたが、唐突に立ち止まって振り返らずに言う。
「…そういうことを口に出すのは、品がないと思うわっ」
「あら、ごめんなさい。うふふふっ」
真は伊織の首が真っ赤に染まっていくのを、得心の行かない気持ちで見ていた。
あずさが二人の肩を抱いて、前に押し出すようにして、言った。
「さ、更衣室へ行きましょう〜」
「おはよー、あずさ、真」
普段通りに挨拶すると、何とも言えない表情をした二人が、こっちを見返す。
怪訝に思い、伊織は理由を聞くと、真が少し迷いながらも、週刊誌を差し出した。
ページをめくると、伊織の父と社長の関係から、765プロに伊織がコネで入ったこと、そこで行われた金銭の授受や、その使い道などといったことが一部の事実が悪意でもってゆがめられた想像で補完されてつづられていた。
軽い衝撃を受けるが、以前ほどの衝撃は受けなかった。
「…まったく。よく調べたもんよね」
伊織はムカムカしながら、週刊誌を机の上に放り出す。
真はその様子を見て、心配そうな視線を投げ返してきた。
「何よ。変な顔して。ショックなんか受けてないわよ。腹は立つけどね」
「そっか…ならいいんだけど」
「うん。自分でも不思議なんだけどね」
あずさがにっこりと笑って言う。
「伊織ちゃんが、自分自身でこれがホントじゃないってわかってるから、よね〜」
「そうなのかな…自分ではわからないけど」
しかし、ショックはなくても気になることはある。
「…けど、ファンはそうじゃないかもしれないわね」
「そうねぇ〜…私たちではどうにも出来ないかも〜」
3人でため息をついたとたん、事務室のドアがいきなり開いた。
振り返ってみると、山本がそこにいた。
「プロデューサー!」
真が、安堵半分、不安半分のような、微妙な声で叫んだ。
山本が机に目をとめて言う。
「ああ。例の記事、読んだようだな…手間が省けた。説明しようと思ったところだ。
記事への対応に関しては、今協議中だ。
今のところ、テレビのワイドショーなどが食いついてくる様子もないので、まあ、状況はそれほどひどくない。
とりあえずは、俺たちは俺たちの仕事をきっちりこなしていく、ということだけ考えていればいい」
3人は顔を見合わせる。
「記者会見とか、ひらくわけ?」
伊織が問う。
「その可能性もある。けど、世間の反応次第だ。
ただ…正直に言うと、今回は社長と水瀬氏…伊織のお父さんだな、彼との関係が取り沙汰されている…
このことで問題が若干ややこしくなっているのは事実だ」
「ふーん…」
その言葉を聞いて、伊織は目を伏せる。
お父様と社長の関係はどうでも良いが、コネで成功をつかんだと言われるのは悔しかった。
「伊織。悔しいか?」
ズバリ心情を言い当てられて、さらにむかっ腹が立った。
「…あんたね。オブラートにくるむって言葉知らないのッ!?」
飛びかかろうとした伊織を見て、真が止めに入ろうとしたが、それをあずさが制止する。
伊織が山本相手に「ストレスを発散」させていると、頃合いを見てあずさが止めに入った。
「伊織ちゃん、それ以上はダメよ〜」
「はぁはぁ、なによっ!」
「プロデューサーさんが死んじゃうわよぅ〜。落ち着いて〜、ねっ?」
その言葉を聞いて少し落ち着いた伊織は、山本に向かって言う。
「まったくっ!言葉を選ぶってことをちょっとは覚えなさいよねっ!!」
「は、はひ…」
ぼろぼろになった山本が、伊織の方を見ずに返事する。
「立ちなさいよ、ほらっ!」
伊織が手を差し出すと、その手にすがって山本が立ち上がった。
「あたた…相変わらず伊織は容赦がないな…」
「あんたがよけいなことを言うからでしょっ!ホントに学習能力のない奴ねっ!」
伊織がそっぽを向いて答えると、あずさがすかさず言った。
「じゃあ、レッスン場に行きましょう〜」
「ああ、そうだな。じゃあ今日はダンスレッスンだ。第2レッスン室に5分後に集合」
レッスン室に向かう道すがら、真があずさに問いかけた。
「ねえ、あずささん。どうして、伊織を止めようとしたボクを止めたんですか?」
「ん?ふふふっ。あれは、プロデューサーさん、わざとああいったのよ〜」
「え?ど、どういうことですか?」
「わかんない?きっと、真ちゃんにもわかると思うわよ〜。
だって、伊織ちゃんはわかってるもの。ね?」
伊織はしばらく黙っていたが、唐突に立ち止まって振り返らずに言う。
「…そういうことを口に出すのは、品がないと思うわっ」
「あら、ごめんなさい。うふふふっ」
真は伊織の首が真っ赤に染まっていくのを、得心の行かない気持ちで見ていた。
あずさが二人の肩を抱いて、前に押し出すようにして、言った。
「さ、更衣室へ行きましょう〜」
| Copyright 2006,03,15, Wednesday 12:12am 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |
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