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伊織の再出発(1)

ちゃららんちゃららんちゃらん♪

伊織の携帯電話が鳴り響く。
着信をみると、プロデューサーからだった。

『…久しぶりの連絡ね』

そう思いながら、電話をとる。

「はい、もしもし?」
「あ、伊織か。俺だ。」
「どちらの俺様でしょう」
「…そんなとげのある言い方をするなよ。いくら久しぶりだからって…」

実際、前に会ってから、2週間近い時間が経っている。
仕事は、バラエティのゲストだの、トークショーの司会だのといったものが大半であるため、プロデューサーと会わずとも進んではいた。しかし、2週間近く放置されるというのは、Aランクと呼ばれるトップクラスのアイドルが受ける仕打ちとしては、最悪の部類だろう。

「トゲも刺したくなるわ。2週間ぶりぐらいじゃない。いったい何してたのよ!」
「いや、しばらく時間が経ったことは謝る。色々と裏で動いてたもんでね」
「裏?」
「遠回しに言ってもしょうがないので、単刀直入に行こう。伊織、お前、ユニットくんでみる気はないか?」
「ユニット!?どういうこと?」

あまりに唐突な申し出に、伊織は混乱した。
今までソロでやってきて、なんの問題もないのに、なぜ突然赤の他人とユニットを組むなどという話が出てくるのか。

「いやな…今までソロでやってきて、そろそろ実力もついてきたじゃないか。ここらでハモりとか、多人数ならではの魅力の追求…」
「そういう、あからさまなお世辞混じりの説明が私に通用するとか思ってる?」

伊織は、プロデューサーの言葉を遮った。

「私は今のところ、なんの問題も感じてない。そこへ降ってわいたような、ユニットの話なんてされても、全く興味は感じないし、乗れないわね」
「…わかった。じゃあ、ここも単刀直入に行こう」
「そうしてくれると助かるわ」
「伊織、おまえ、なんの問題も感じてないと言ったが、それは本当か?」

伊織は内心ぎくりとした。
最近の仕事内容で、音楽に関するものが明らかに減っていることを感じていたからだ。
小気味よい風刺の効いたしゃべり口調で、バラエティなどで好評を得てはいるものの、音楽的な部分が疎かになっているのではないかという漠然とした不安感がここのところ、伊織につきまとっていた。

「…単刀直入って言った割には遠回しね」

精一杯の反論だった。

「じゃあ、ズバリ行かせてもらうと、伊織、お前音楽的な部分で行き詰まりを感じていないか?ということだ」
「………」
「図星のようだな。まあ、俺もその辺をここのところずっと感じていてな。何とかしようとおもって、パートナー選びや、交渉なんかをしてたんだ」
「…じゃあ、こうして、連絡が来るってことは…
「うん。目処がついた。後は伊織さえうんと言ってくれれば、プロジェクトが進み出す」
「…少し考えさせてちょうだい」
「わかった。しかし、結論を先送りにはできない。行くにしても、退くにしても、明日必ず事務所に来てくれ。そこで返事を聞こう」
「わかったわ。じゃあ、明日事務所で」

…ユニット…

お前はピンではやれない、といわれたような気がした。(続く


| Copyright 2006,02,02, Thursday 02:00am 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |

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