THE iDOLM@STER 長編::伊織の再出発
復帰への足がかり(3)
「山本君か!?一体、今まで何をしていたのかね!」
『社長、すみませんでした。いろいろと後始末と準備がありまして…』
「なんの準備だ!」
『とりあえず、警察へのフォローも含めて後始末は終えました。ライブのことを新聞などで叩かれることはないと思います』
「こんな勝手な真似をして…ただですむと思っているのか!?」
『思っていません。クビも覚悟の上です。が、伊織のことに関しては、考え直して頂けますよね?』
「…それは」
高木は視線を一瞬伊織に投げる。今にも社長に飛びかからんとしていたが、伊織は後の二人に押さえ込まれていた。
受話器に視線を戻す。
「…ああ。もう、こうなった以上、そうするのがベストだろう」
『ありがとうございます、社長。そういって頂けると思っていました』
「とにかく、明日には事務所に来るんだろうね!?」
『いえ。これから行きます。』
「…わかった。とりあえず、今後のことに関しては後で詳細を聞こう」
『そこに3人はいますか?』
「うむ。いるが。明日のことかね?」
『あずささんを出してもらえますか』
社長は受話器を押さえてあずさを呼ぶ。
「む、むりです〜。伊織ちゃんが…伊織ちゃんが…」
「むっかーっ!!どうして私じゃなくてあずさなのよっ!!プロデューサーギッタギタにのしてやるから私を出しなさいっ!!」
高木は受話器から手を放して、山本に言った。
「…と、いうわけだが、どうするかね?」
『しょうがないですね…じゃあ伊織を出してください』
ようやく二人から解放された伊織が受話器に飛びついて一声。
「こーのボケプロデューサ━━━━━━━━━━━━━━━━━っ!!」
事務所の屋根が吹っ飛ぶほどの声量で受話器に叫ぶ。
受話器の向こうから山本のうめき声が聞こえてくる。
「なーにやってたのよっ!アンタ最近こういうの多すぎよ!!なんにも無しで放置とかやめなさいよ!!それでも社会人!?」
『す、すまん、悪かった。確かに連絡しなかったのは俺の落ち度だ。けど、今後のコトを詰めてたら、連絡する暇もなくて…』
「いいわけはいいから、今後どうするのかちゃっちゃと指示しなさいよ!」
『わ、わかった。とりあえずざっと概要を述べるから聞いてくれ』
山本の説明によると、Vocal Master という、歌唱力重視のランキング番組に出演が決まりそうだという。
「ボーカルマスター?それって、すごいじゃない…」
『ああ。苦労したよ』
「どうやって段取りつけたのよ」
『まあ…要するに俺の知り合いの音楽系のライターにお前たちの曲を聴いて貰って、紹介を頼んだんだ』
「へぇ…ライターねえ…」
『ああ。善永って言うんだけど。知ってるか?』
「え…善永って…あの?」
有名アイドル誌のみならず、大手の音楽雑誌にも連載コラムを持ち、彼女が記事を書いたアーティストは必ず大成するというジンクスを持つ超有名ライターだ。
「…やるじゃない。ちょっとは見直してあげてもいいわ」
『お褒めにあずかり光栄だよ。明日は午前中レコーディングで、午後からボーカルマスターの軽いオーディションがあるから、一日拘束になるとあずさと真に伝えてくれ』
「わかったわ。じゃあ、明日遅れたら承知しないわよ」
山本は笑い含みに、ゆっくりと信頼を回復するよ、と言って電話は切れた。
その日の夜、高木は社長室で山本の報告を聞いていた。
山本はこの三日間の行動をすべて報告し、明日の予定と今後のプロデュース計画を報告した。
「…以上です」
「わかった。ご苦労だったね」
「いえ。本当にすみませんでした」
「いや。結局、伊織ちゃ…ゴホン!水瀬君の名誉挽回に努めてくれたのだし、そのことに関しては感謝している。
このまま潰れるには惜しい逸材であったことは疑いようもないからな」
「はい」
「では、帰ってゆっくり休んでくれ。明日からは激務になるぞ」
「はい、わかっています。では、失礼します」
山本は頭を下げて、社長室をでようとドアノブに手をかけた。
出がけに思い出したように社長にいう。
「あ、そうだ、社長」
「ん?」
「下農さんへの取り次ぎ、ありがとうございました。おかげでスムーズに事が運びましたよ」
「ん?なんのことかな?」
社長はすましている。
山本は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに顔を伏せて、できるだけ冷静に聞こえるようにいった。
「…ああ、勘違いならいいんです。失礼します」
「うむ」
ばたんと後ろ手にドアを閉じ、山本は笑いをこらえきれないかのように吹き出した。
『社長、すみませんでした。いろいろと後始末と準備がありまして…』
「なんの準備だ!」
『とりあえず、警察へのフォローも含めて後始末は終えました。ライブのことを新聞などで叩かれることはないと思います』
「こんな勝手な真似をして…ただですむと思っているのか!?」
『思っていません。クビも覚悟の上です。が、伊織のことに関しては、考え直して頂けますよね?』
「…それは」
高木は視線を一瞬伊織に投げる。今にも社長に飛びかからんとしていたが、伊織は後の二人に押さえ込まれていた。
受話器に視線を戻す。
「…ああ。もう、こうなった以上、そうするのがベストだろう」
『ありがとうございます、社長。そういって頂けると思っていました』
「とにかく、明日には事務所に来るんだろうね!?」
『いえ。これから行きます。』
「…わかった。とりあえず、今後のことに関しては後で詳細を聞こう」
『そこに3人はいますか?』
「うむ。いるが。明日のことかね?」
『あずささんを出してもらえますか』
社長は受話器を押さえてあずさを呼ぶ。
「む、むりです〜。伊織ちゃんが…伊織ちゃんが…」
「むっかーっ!!どうして私じゃなくてあずさなのよっ!!プロデューサーギッタギタにのしてやるから私を出しなさいっ!!」
高木は受話器から手を放して、山本に言った。
「…と、いうわけだが、どうするかね?」
『しょうがないですね…じゃあ伊織を出してください』
ようやく二人から解放された伊織が受話器に飛びついて一声。
「こーのボケプロデューサ━━━━━━━━━━━━━━━━━っ!!」
事務所の屋根が吹っ飛ぶほどの声量で受話器に叫ぶ。
受話器の向こうから山本のうめき声が聞こえてくる。
「なーにやってたのよっ!アンタ最近こういうの多すぎよ!!なんにも無しで放置とかやめなさいよ!!それでも社会人!?」
『す、すまん、悪かった。確かに連絡しなかったのは俺の落ち度だ。けど、今後のコトを詰めてたら、連絡する暇もなくて…』
「いいわけはいいから、今後どうするのかちゃっちゃと指示しなさいよ!」
『わ、わかった。とりあえずざっと概要を述べるから聞いてくれ』
山本の説明によると、Vocal Master という、歌唱力重視のランキング番組に出演が決まりそうだという。
「ボーカルマスター?それって、すごいじゃない…」
『ああ。苦労したよ』
「どうやって段取りつけたのよ」
『まあ…要するに俺の知り合いの音楽系のライターにお前たちの曲を聴いて貰って、紹介を頼んだんだ』
「へぇ…ライターねえ…」
『ああ。善永って言うんだけど。知ってるか?』
「え…善永って…あの?」
有名アイドル誌のみならず、大手の音楽雑誌にも連載コラムを持ち、彼女が記事を書いたアーティストは必ず大成するというジンクスを持つ超有名ライターだ。
「…やるじゃない。ちょっとは見直してあげてもいいわ」
『お褒めにあずかり光栄だよ。明日は午前中レコーディングで、午後からボーカルマスターの軽いオーディションがあるから、一日拘束になるとあずさと真に伝えてくれ』
「わかったわ。じゃあ、明日遅れたら承知しないわよ」
山本は笑い含みに、ゆっくりと信頼を回復するよ、と言って電話は切れた。
その日の夜、高木は社長室で山本の報告を聞いていた。
山本はこの三日間の行動をすべて報告し、明日の予定と今後のプロデュース計画を報告した。
「…以上です」
「わかった。ご苦労だったね」
「いえ。本当にすみませんでした」
「いや。結局、伊織ちゃ…ゴホン!水瀬君の名誉挽回に努めてくれたのだし、そのことに関しては感謝している。
このまま潰れるには惜しい逸材であったことは疑いようもないからな」
「はい」
「では、帰ってゆっくり休んでくれ。明日からは激務になるぞ」
「はい、わかっています。では、失礼します」
山本は頭を下げて、社長室をでようとドアノブに手をかけた。
出がけに思い出したように社長にいう。
「あ、そうだ、社長」
「ん?」
「下農さんへの取り次ぎ、ありがとうございました。おかげでスムーズに事が運びましたよ」
「ん?なんのことかな?」
社長はすましている。
山本は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに顔を伏せて、できるだけ冷静に聞こえるようにいった。
「…ああ、勘違いならいいんです。失礼します」
「うむ」
ばたんと後ろ手にドアを閉じ、山本は笑いをこらえきれないかのように吹き出した。
| Copyright 2006,06,10, Saturday 04:53pm 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |
コメント
コメントする
トラックバックURL
http://takiyoshiro.fem.jp/tb.php/247