THE iDOLM@STER ショートストーリー
ムリメ その5 A.A.Oの場合
「うぅ〜……結局、ダメでしたね……」
やよいが、心底ガッカリした様子で言った。
結局、A.A.Oは第3審査でもボーカルの評価を取ることはできなかった。
もちろん、懸命にアピールはした。だが、他の参加者のアピールがそれを上回った、のだろう。
「まあ、やれることはやったんだし、いいんじゃない?次回頑張れば」
伊織は、さっぱりした顔で言った。
本当に、全力を出し切った。今の自分たちにできることは全部やった。その上での敗北だったら、しょうがないと思えた。
「で、でもぉ、ごめんなさい〜」
やよいは本当に済まなさそうに言った。
縮みきって、体全体で恐縮しているのが見て取れる。伊織は、やよいがなぜそんなに萎縮しているのか、わからないようだった。
「?何が?」
「私、さっき、勝てるようなことを言っちゃって……」
「ああ」
そんなことを気にしていたのか、と伊織は軽く笑う。伊織は既に、勝ち負けはどうでもよくなっていた。
さっきやよいが、やりきらないとだめだ、と言ったことの意味が、深く体に沁みとおる。
途中であきらめていたら、こんな気分は味わえなかったと思う。その意味では、やよいに感謝している。
「いいの。力出し切れたんだから。自分たちの実力がわかった、ってことよ」
「そう、ですか……?」
「そうよ」
「う、うん。そう……ですよねっ!」
二人で笑いあっていると、底意地の悪い声がそれにかぶった。
「へぇ。殊勝な心がけね」
佐野美心だった。見下したような笑みを浮かべて、やよいと伊織を見ている。
「まあ、もう少し実力付けてから出直してきなさい、ってとこね。あなたたちの実力を思い知れたんだから、安い授業料だったでしょ?」
「ええ、ありがとう。次回は絶対負けないって確信をもてたわ」
「あはは、負け惜しみ?かわいいわねぇ。ま、その次回とやらを楽しみにしてるわ」
笑いながら、佐野美心は去っていった。
「……やな感じですねっ!」
やよいを見ると怒りも露わに美心をにらみつけていた。もちろん、伊織も内心穏やかではなかったが、やよいが怒っていることの方に驚いていた。
「やよい、あんたも怒るのねぇ。。」
「え?」
「だって、怒るところ、初めて見たかも……」
「なに言ってるんですか。わたし、家ではけっこう怒りますよ。だって弟たち小さいし、黙ってたらすっごいことになっちゃいますから」
そのとき、天井のスピーカーからブツッという音が聞こえた。
伊織とやよいは天井を見上げる。
スピーカー越しのくぐもった声が響いた。
「それでは、最終審査の結果発表をします。オーディション参加者は第1ホールに集まってください」
ふう、と伊織はため息をつく。やよいも、伊織に同調したようにため息をついた。
「まあ、型どおりの発表でも、ちゃんと聞きに行かないとね」
「そうですねっ」
二人はお互いに苦笑しあいながら、控え室を出て、すぐに第1ホールへ行った。
ホールには先にもうプロデューサーが来ていた。
「ご苦労さん、ふたりとも」
「ホントよ。結局、オーディションダメだったし」
「まあ……それは、次頑張ればいいじゃないか。オーディションは一回じゃないんだし」
「まあね、今の実力がわかったからイイと言えばいいんだけど……でも」
伊織は目をきっとつり上げて、右手を大きく振りかぶった。
「アンタがそれを言うのはムカつくのよっ!!!」
ぱっちーんと言う軽い音が響いた。やよいは目をつぶってすくんでいる。
プロデューサーは左頬をぶたれて、首が完全に右を向いていた。
「いきなりなにすんだっ!」
「私もやよいもあれだけ無謀だっていったのに、アンタの見通しの甘さがこの負けを付けたってことをおぼえておきなさいよねっ!!!」
伊織は仁王立ちして、プロデューサーを見上げている。
「まあ……それは確かに……悪かった」
「まったく、もうっ!」
伊織は頬を膨らませて腕を組んだ。
「……けど」
頬をさすりながらにやりと笑って、プロデューサーが言った。
「まだ、結果は出てないだろ?」
「?どういうこと?」
「ほら。結果発表始まるぞ。行ってこい」
そういって、プロデューサーはふたりを軽く押し出した。
やよいが、心底ガッカリした様子で言った。
結局、A.A.Oは第3審査でもボーカルの評価を取ることはできなかった。
もちろん、懸命にアピールはした。だが、他の参加者のアピールがそれを上回った、のだろう。
「まあ、やれることはやったんだし、いいんじゃない?次回頑張れば」
伊織は、さっぱりした顔で言った。
本当に、全力を出し切った。今の自分たちにできることは全部やった。その上での敗北だったら、しょうがないと思えた。
「で、でもぉ、ごめんなさい〜」
やよいは本当に済まなさそうに言った。
縮みきって、体全体で恐縮しているのが見て取れる。伊織は、やよいがなぜそんなに萎縮しているのか、わからないようだった。
「?何が?」
「私、さっき、勝てるようなことを言っちゃって……」
「ああ」
そんなことを気にしていたのか、と伊織は軽く笑う。伊織は既に、勝ち負けはどうでもよくなっていた。
さっきやよいが、やりきらないとだめだ、と言ったことの意味が、深く体に沁みとおる。
途中であきらめていたら、こんな気分は味わえなかったと思う。その意味では、やよいに感謝している。
「いいの。力出し切れたんだから。自分たちの実力がわかった、ってことよ」
「そう、ですか……?」
「そうよ」
「う、うん。そう……ですよねっ!」
二人で笑いあっていると、底意地の悪い声がそれにかぶった。
「へぇ。殊勝な心がけね」
佐野美心だった。見下したような笑みを浮かべて、やよいと伊織を見ている。
「まあ、もう少し実力付けてから出直してきなさい、ってとこね。あなたたちの実力を思い知れたんだから、安い授業料だったでしょ?」
「ええ、ありがとう。次回は絶対負けないって確信をもてたわ」
「あはは、負け惜しみ?かわいいわねぇ。ま、その次回とやらを楽しみにしてるわ」
笑いながら、佐野美心は去っていった。
「……やな感じですねっ!」
やよいを見ると怒りも露わに美心をにらみつけていた。もちろん、伊織も内心穏やかではなかったが、やよいが怒っていることの方に驚いていた。
「やよい、あんたも怒るのねぇ。。」
「え?」
「だって、怒るところ、初めて見たかも……」
「なに言ってるんですか。わたし、家ではけっこう怒りますよ。だって弟たち小さいし、黙ってたらすっごいことになっちゃいますから」
そのとき、天井のスピーカーからブツッという音が聞こえた。
伊織とやよいは天井を見上げる。
スピーカー越しのくぐもった声が響いた。
「それでは、最終審査の結果発表をします。オーディション参加者は第1ホールに集まってください」
ふう、と伊織はため息をつく。やよいも、伊織に同調したようにため息をついた。
「まあ、型どおりの発表でも、ちゃんと聞きに行かないとね」
「そうですねっ」
二人はお互いに苦笑しあいながら、控え室を出て、すぐに第1ホールへ行った。
ホールには先にもうプロデューサーが来ていた。
「ご苦労さん、ふたりとも」
「ホントよ。結局、オーディションダメだったし」
「まあ……それは、次頑張ればいいじゃないか。オーディションは一回じゃないんだし」
「まあね、今の実力がわかったからイイと言えばいいんだけど……でも」
伊織は目をきっとつり上げて、右手を大きく振りかぶった。
「アンタがそれを言うのはムカつくのよっ!!!」
ぱっちーんと言う軽い音が響いた。やよいは目をつぶってすくんでいる。
プロデューサーは左頬をぶたれて、首が完全に右を向いていた。
「いきなりなにすんだっ!」
「私もやよいもあれだけ無謀だっていったのに、アンタの見通しの甘さがこの負けを付けたってことをおぼえておきなさいよねっ!!!」
伊織は仁王立ちして、プロデューサーを見上げている。
「まあ……それは確かに……悪かった」
「まったく、もうっ!」
伊織は頬を膨らませて腕を組んだ。
「……けど」
頬をさすりながらにやりと笑って、プロデューサーが言った。
「まだ、結果は出てないだろ?」
「?どういうこと?」
「ほら。結果発表始まるぞ。行ってこい」
そういって、プロデューサーはふたりを軽く押し出した。
| Copyright 2007,09,06, Thursday 02:04am 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |
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