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ムリメ 後書き

というわけで、全六回、「ムリメ」でした。
ムリメ=無理目ということで、少し無理目のオーディションを受けたDランクアイドル、と言うお話でした。
いかがでしたでしょうか?

これ実は、本当にあったオーディションを元に作ったお話です。
全国五万をDランクで受けに行ったときのことですが、僕以外オールCOMで、Vo>Da>Viという流行順位でした。
自分のレベルが11、あとのCOMのレベルは軒並みそれ以下だったのですが、1節目ボム祭が起こって、それに合わせて思い出2発投入したにもかかわらず2−5−4をくらい、目の前がまっくらに。
次の節では少し低めに見積もったとはいえ2−1−4。この次点でわずか7点。もう絶対負けたと思いましたが、ボーカルが帰りかけていたのでボーカル連打、返した上でBOM投入して5点をもぎ取り、何とか合格した、という危ないオーディションでした。

後で見たら、1節のボーカルのボーダーが900点台、ダンスのボーダーが600点台というとんでもないボーダーで、スピアでもしなければとれないという。1.3になってから、ホント油断できなくなりましたよね。


さて、「ムリメ」に話を戻します。
このオーディションを通じて、我々プレイヤーは普段、負けたCOMのことなんて全く気にもとめませんが、本当は彼女たちも出たかったんだろうなあ、などと妄想を膨らませて、作ったのがこのお話です。
今回はお話の都合上、佐野美心さんには悪役に回ってもらいましたが、いろいろ解釈の仕方はあると思います。

そういう、プレイヤーの想像力を刺激する、遊びの部分が、ホントにステキなゲームですよね。アイドルマスター。

というところできれいにまとまったので、これにて失礼します。読んでいただいた方、ありがとうございました。


| Copyright 2007,09,06, Thursday 02:51pm 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |

 

ムリメ その6

オーディション参加者がずらりと並ぶ中、一段高い位置に審査員達が立っている。
おそらく審査結果が書かれているであろう、B5くらいの紙を手元に持った審査員長の歌田音が一歩前に進み出て、
「では、今回の審査結果を発表します」
と言った。

伊織もやよいもうつむいていた。
覚悟していることとはいえ、落選をハッキリ告げられるのはやはり心に突き刺さる。
ふたりとも覚悟を決めて、ぐっと目を閉じていた。

「合格は総合12ポイントでエントリーナンバー1番、A.A.Oさん、そして今一組は総合10ポイントでエントリーナンバー3番、理科さんです。理科さんと佐野美心さんは総合ポイントで同点でしたが、今回はよりフレッシュな理科さんに出ていただくことにしました」

え?

あちこちで悲鳴が上がる中、伊織とやよいはぽかんと目を開けた。
目を開けても、周りの混乱が目にはいるばかりで、さっき聞こえた審査員長の言葉が幻聴かそうでないかの区別が付かない。
結局一番信頼できる、すぐ横にいるパートナーにお互いの目を合わせて、

「え、あの?」
「合格?」

と、つぶやきあった。

「それでは、講評に移ります」

混乱を制するように、審査員長がぴしりと言った。ざわめきは瞬時に収まり、全員の目が壇上に向けられた。

「今回の審査は非常に難航しました。と、いうのも、参加者の皆さんは、ボーカルに関しては非常に僅差で、ほとんど差異はなかったからです。そこで、今回の審査では急遽特別に、ダンスとビジュアルのみの審査とさせていただくこととなりました」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

参加者側から異議の声が上がった。佐野美心だった。

「そんなことがあるなんて、聞いていません!」
「いえ。きちんと、オーディション前に説明したはずです。『審査の形式を変えることがある』、と」
「あ……」

黙ってしまった美心に構うことなく、審査員長は全員に視線を戻した。

「今回のオーディションは先だって述べたとおり、非常にレベルの高いものになり、私たちも満足しています。今回落選した方も、次回以降のオーディションに参加してもらえることを期待します。では、合格した方以外の参加者は帰ってくださってけっこうです」

不合格のアイドルたちが肩を落として、その場を去っていく中、佐野美心は、怒りに全身を震わせて、やよいと伊織をにらみつけていた。

「こんな……こんな審査員の気まぐれで決まった勝ち負けなんて、認めない!」
「……」

伊織もやよいも、まだ事態を把握していなかった。合格したということどころか、勝った、負けたという意識すらなかった。
突然降ってわいた事実にただ困惑し、返す言葉を失って、立ちつくす。

怒りに顔をゆがめた美心の顔が、こんどはひどく弱々しく見えた。
美心のつり上がった目が次第に細まっていく。すると、ぽろりと大粒の涙がこぼれた。

「認めない……ん、だから……っ!」

美心の声に嗚咽が混じる。
伊織とやよいがただ困惑していると、長髪を金髪に染めた男性が小走りに駆けてきた。美心のプロデューサーらしい。
彼は彼女の肩を抱くと、

「ごめんね、気にしないで」

と、伊織とやよいに苦笑がちに言って、美心を連れて出て行った。
それを見送っていると、後ろからぽんと肩を叩く手があった。プロデューサーだ。

「やったな」
「……うん。でも……なんだか……」
「ん?」
「これって、フロックで受かっただけ、よね。実力って気がしないわ」

複雑な顔をして、伊織は言った。やよいは、ん?と言う顔をして、首をかしげる。

「フロックでも運でも奇跡でも、結果は受け止めるべきだろ?」
「実力は関係ないってこと?」
「そうじゃないが。まあ、運も実力のうちってやつかな」

プロデューサーは軽く笑う。

「でも。そんな不確かなもの、実力って言える?」
「わかんないか?お前達はちゃんとダンスとビジュアルでポイントがあったじゃないか」
「?」
「それがなければ、引き寄せる運もなかったってことだよ」
「わかるような、わからないような〜……うーん。」
「まあ、いずれわかるよ。そういうわけで、今日の殊勲賞はやよいだな」

さっきまで難しい顔をして腕組みをしながら考えごとをしていたやよいは、突然ふられて、かるく慌てた。

「え!?あ、わ、わたしですかっ!?」
「今日オーディションで勝ったのはやよいのおかげみたいなもんだ」

微笑んでプロデューサーが言うと、やよいは?顔を満面に浮かべたままで言った。

「え……え、あの、フロッグだからですか?」
「は?フロッグ?」
「わたしのべろちょろのおかげで勝てた、ってことですか??」
「……べろちょろ?ってなに?」

プロデューサーが真顔で問うと、伊織が吹き出した。
伊織は腹を抱えて笑っている。

「あははははは!やよい、アンタばっかねえ、フロックってまぐれのことよ、ま、ぐ、れ」
「え、あ、そ、そうだったんですかっ!?」

やよいは頭を抱える。その横で、伊織はずっと大笑いしていた。
一人残されたプロデューサーは、ずっと

「なあ。べろちょろって何なんだ?」

と言っていた。(fin)


続き▽

| Copyright 2007,09,06, Thursday 02:43pm 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |

 

ムリメ その5 A.A.Oの場合

「うぅ〜……結局、ダメでしたね……」

やよいが、心底ガッカリした様子で言った。
結局、A.A.Oは第3審査でもボーカルの評価を取ることはできなかった。
もちろん、懸命にアピールはした。だが、他の参加者のアピールがそれを上回った、のだろう。

「まあ、やれることはやったんだし、いいんじゃない?次回頑張れば」

伊織は、さっぱりした顔で言った。
本当に、全力を出し切った。今の自分たちにできることは全部やった。その上での敗北だったら、しょうがないと思えた。

「で、でもぉ、ごめんなさい〜」

やよいは本当に済まなさそうに言った。
縮みきって、体全体で恐縮しているのが見て取れる。伊織は、やよいがなぜそんなに萎縮しているのか、わからないようだった。

「?何が?」
「私、さっき、勝てるようなことを言っちゃって……」
「ああ」

そんなことを気にしていたのか、と伊織は軽く笑う。伊織は既に、勝ち負けはどうでもよくなっていた。

さっきやよいが、やりきらないとだめだ、と言ったことの意味が、深く体に沁みとおる。
途中であきらめていたら、こんな気分は味わえなかったと思う。その意味では、やよいに感謝している。

「いいの。力出し切れたんだから。自分たちの実力がわかった、ってことよ」
「そう、ですか……?」
「そうよ」
「う、うん。そう……ですよねっ!」

二人で笑いあっていると、底意地の悪い声がそれにかぶった。

「へぇ。殊勝な心がけね」

佐野美心だった。見下したような笑みを浮かべて、やよいと伊織を見ている。

「まあ、もう少し実力付けてから出直してきなさい、ってとこね。あなたたちの実力を思い知れたんだから、安い授業料だったでしょ?」
「ええ、ありがとう。次回は絶対負けないって確信をもてたわ」
「あはは、負け惜しみ?かわいいわねぇ。ま、その次回とやらを楽しみにしてるわ」

笑いながら、佐野美心は去っていった。

「……やな感じですねっ!」

やよいを見ると怒りも露わに美心をにらみつけていた。もちろん、伊織も内心穏やかではなかったが、やよいが怒っていることの方に驚いていた。

「やよい、あんたも怒るのねぇ。。」
「え?」
「だって、怒るところ、初めて見たかも……」
「なに言ってるんですか。わたし、家ではけっこう怒りますよ。だって弟たち小さいし、黙ってたらすっごいことになっちゃいますから」

そのとき、天井のスピーカーからブツッという音が聞こえた。
伊織とやよいは天井を見上げる。
スピーカー越しのくぐもった声が響いた。

「それでは、最終審査の結果発表をします。オーディション参加者は第1ホールに集まってください」

ふう、と伊織はため息をつく。やよいも、伊織に同調したようにため息をついた。

「まあ、型どおりの発表でも、ちゃんと聞きに行かないとね」
「そうですねっ」

二人はお互いに苦笑しあいながら、控え室を出て、すぐに第1ホールへ行った。
ホールには先にもうプロデューサーが来ていた。

「ご苦労さん、ふたりとも」
「ホントよ。結局、オーディションダメだったし」
「まあ……それは、次頑張ればいいじゃないか。オーディションは一回じゃないんだし」
「まあね、今の実力がわかったからイイと言えばいいんだけど……でも」

伊織は目をきっとつり上げて、右手を大きく振りかぶった。

「アンタがそれを言うのはムカつくのよっ!!!」

ぱっちーんと言う軽い音が響いた。やよいは目をつぶってすくんでいる。
プロデューサーは左頬をぶたれて、首が完全に右を向いていた。

「いきなりなにすんだっ!」
「私もやよいもあれだけ無謀だっていったのに、アンタの見通しの甘さがこの負けを付けたってことをおぼえておきなさいよねっ!!!」

伊織は仁王立ちして、プロデューサーを見上げている。

「まあ……それは確かに……悪かった」
「まったく、もうっ!」

伊織は頬を膨らませて腕を組んだ。

「……けど」

頬をさすりながらにやりと笑って、プロデューサーが言った。

「まだ、結果は出てないだろ?」
「?どういうこと?」
「ほら。結果発表始まるぞ。行ってこい」

そういって、プロデューサーはふたりを軽く押し出した。



| Copyright 2007,09,06, Thursday 02:04am 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |

 

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