THE iDOLM@STER ショートストーリー
ムリメ その2 プロデューサーの場合
Dランクのアイドルユニット「A.A.O」のプロデューサーは、その日。
老舗の歌番組「LOVE LOVE LIVE!」のオーディションに、「A.A.O」をエントリーさせた。
ここ最近の「A.A.O」メンバー、水瀬伊織と高槻やよいの実力向上は目覚ましく、
ランクとは関係なく、十分に合格をねらえる、と言う判断を下したのである。
しかし、さすが老舗。出てきているアイドルはみな、AランクやBランク、低くてもCランクであり、
Dランクなどと言うアイドルは一組も出てきていない。
オーディションの待合室でも、よくテレビで見かけるアイドルたちばかりだった。
「ねえ、ちょっと……このオーディション、いくら何でも、私たち場違いじゃない?」
伊織は、周りを見て不安そうにつぶやいた。
伊織の心配ももっともだ。
しかし、もちろん。プロデューサーはそんなことは織り込み済みでエントリーしていた。
臆することなく、実力を発揮すれば今の二人なら必ず合格する。
そう考えてのエントリーだ。
「そんなことはないだろ。お前達は新進気鋭の人気急上昇アイドルなんだから。これくらいでちょうどいいよ」
「で、でも……プロデューサぁ。他の参加者の人たち、こっちにらんでる気がしますー……」
やよいが周りを見て、不安そうに言った。二人とも、相当不安を感じている様子だった。
ここは、プロデューサーのつとめとして、きちんと彼女らの不安を取り去っておくべきだろう。
「そんなの気のせいだよ。昨日のレッスンのやよいの声のノビは素晴らしかったぞ。あの調子でいけば、絶対大丈夫!」
「そ、そうですかっ?」
プロデューサーがそういうと、やよいの顔がぱっと明るくなった。
伊織が、ちらっとやよいを見てから、プロデューサーを軽くねめつける。
伊織のその態度の意味するところを察したプロデューサーは、伊織に言った。
「あ、もちろん伊織もな」
その言葉は彼の本心だったが、しかし。その言葉はかえって伊織を怒らせたようだ。
伊織はぷーっとふくれっツラを作った。
「なによ、そのいかにも付け足しですー、っていう感じの言い方はっ!!」
「そ、そんなの言いがかりだっ!付け足しなんて思ってないっ!」
「言い方に心がこもってないってのよっ!」
「どういえばこもってるって言うんだっ!」
「そんなの、アンタが考えなさいよっ!」
「え、えーと……その……そう。伊織も声のノビが素晴らしかったぞ!」
「なにその工夫のかけらもない言い方……アンタ本気で頭悪いんじゃないの?」
伊織はいかにもあきれ果てた、という表情を作った。
やばい。このままだと、伊織のテンションを落としてしまう。
少しあせりはじめると、やよいが慌てて言った。
「あ、あのっ」
プロデューサーの様子を見かねたやよいが、助け船に入ってきてくれたようだ。
プロデューサーは思わず、感謝と期待の念を込めて、やよいを見た。
やよいナイス。フォロー頼む!
「伊織ちゃんはいつもすっごくかわいいし、わたしよりもずーっと歌も上手だから、わたしのことを助けてほしいですっ!」
「え、そ、そう?」
突然横合いから入ってきたやよいに少したじろぎながら、伊織はうっすらと頬を赤らめる。
やよいのそのあまりにもストレートな言葉は、伊織にもストレートに届いたようだ。
プロデューサーはその様子を見て、思わず微笑んだ。が。
それを見とがめた伊織が、キッとにらみつけた。
「何笑ってるのよっ」
「い、いや。別に」
「ふんっ!アンタ、やよいをちょっとは見習いなさいよ!オーディション前のアイドルのテンション下げるなんて、ほんとにそれでもプロデューサーなの?」
「ぐっ……と、とにかく!今日はボーカル審査員が主審だから。ボーカルの実力をしっかりアピールしてくれば、二人の実力なら、絶対合格だから!」
プロデューサーがそういった瞬間、控え室のスピーカーからブツッっという音がした。
全員の注意が、天井に集中する。
「『LOVE LOVE LIVE!』オーディションに参加される皆さんは、オーディション会場に集まってください。これより審査を開始します……」
ボーカル審査員である歌田音の声だ。ついに審査が始まる。
「お。始まるみたいだ。とにかく頑張ってこい」
「なにそれ。なーんか、アンタの言うことって根性論なのよね……
ま、いいわ。負ける気はさらさらないし。やよい、行くわよ!」
「あ、伊織ちゃん、まってぇー」
元気よく、オーディションにかけていく二人を見守りつつ、
プロデューサーは二人が合格することを疑っていなかった。
周りを包む異様な気配には、全く気がつくことなく。
老舗の歌番組「LOVE LOVE LIVE!」のオーディションに、「A.A.O」をエントリーさせた。
ここ最近の「A.A.O」メンバー、水瀬伊織と高槻やよいの実力向上は目覚ましく、
ランクとは関係なく、十分に合格をねらえる、と言う判断を下したのである。
しかし、さすが老舗。出てきているアイドルはみな、AランクやBランク、低くてもCランクであり、
Dランクなどと言うアイドルは一組も出てきていない。
オーディションの待合室でも、よくテレビで見かけるアイドルたちばかりだった。
「ねえ、ちょっと……このオーディション、いくら何でも、私たち場違いじゃない?」
伊織は、周りを見て不安そうにつぶやいた。
伊織の心配ももっともだ。
しかし、もちろん。プロデューサーはそんなことは織り込み済みでエントリーしていた。
臆することなく、実力を発揮すれば今の二人なら必ず合格する。
そう考えてのエントリーだ。
「そんなことはないだろ。お前達は新進気鋭の人気急上昇アイドルなんだから。これくらいでちょうどいいよ」
「で、でも……プロデューサぁ。他の参加者の人たち、こっちにらんでる気がしますー……」
やよいが周りを見て、不安そうに言った。二人とも、相当不安を感じている様子だった。
ここは、プロデューサーのつとめとして、きちんと彼女らの不安を取り去っておくべきだろう。
「そんなの気のせいだよ。昨日のレッスンのやよいの声のノビは素晴らしかったぞ。あの調子でいけば、絶対大丈夫!」
「そ、そうですかっ?」
プロデューサーがそういうと、やよいの顔がぱっと明るくなった。
伊織が、ちらっとやよいを見てから、プロデューサーを軽くねめつける。
伊織のその態度の意味するところを察したプロデューサーは、伊織に言った。
「あ、もちろん伊織もな」
その言葉は彼の本心だったが、しかし。その言葉はかえって伊織を怒らせたようだ。
伊織はぷーっとふくれっツラを作った。
「なによ、そのいかにも付け足しですー、っていう感じの言い方はっ!!」
「そ、そんなの言いがかりだっ!付け足しなんて思ってないっ!」
「言い方に心がこもってないってのよっ!」
「どういえばこもってるって言うんだっ!」
「そんなの、アンタが考えなさいよっ!」
「え、えーと……その……そう。伊織も声のノビが素晴らしかったぞ!」
「なにその工夫のかけらもない言い方……アンタ本気で頭悪いんじゃないの?」
伊織はいかにもあきれ果てた、という表情を作った。
やばい。このままだと、伊織のテンションを落としてしまう。
少しあせりはじめると、やよいが慌てて言った。
「あ、あのっ」
プロデューサーの様子を見かねたやよいが、助け船に入ってきてくれたようだ。
プロデューサーは思わず、感謝と期待の念を込めて、やよいを見た。
やよいナイス。フォロー頼む!
「伊織ちゃんはいつもすっごくかわいいし、わたしよりもずーっと歌も上手だから、わたしのことを助けてほしいですっ!」
「え、そ、そう?」
突然横合いから入ってきたやよいに少したじろぎながら、伊織はうっすらと頬を赤らめる。
やよいのそのあまりにもストレートな言葉は、伊織にもストレートに届いたようだ。
プロデューサーはその様子を見て、思わず微笑んだ。が。
それを見とがめた伊織が、キッとにらみつけた。
「何笑ってるのよっ」
「い、いや。別に」
「ふんっ!アンタ、やよいをちょっとは見習いなさいよ!オーディション前のアイドルのテンション下げるなんて、ほんとにそれでもプロデューサーなの?」
「ぐっ……と、とにかく!今日はボーカル審査員が主審だから。ボーカルの実力をしっかりアピールしてくれば、二人の実力なら、絶対合格だから!」
プロデューサーがそういった瞬間、控え室のスピーカーからブツッっという音がした。
全員の注意が、天井に集中する。
「『LOVE LOVE LIVE!』オーディションに参加される皆さんは、オーディション会場に集まってください。これより審査を開始します……」
ボーカル審査員である歌田音の声だ。ついに審査が始まる。
「お。始まるみたいだ。とにかく頑張ってこい」
「なにそれ。なーんか、アンタの言うことって根性論なのよね……
ま、いいわ。負ける気はさらさらないし。やよい、行くわよ!」
「あ、伊織ちゃん、まってぇー」
元気よく、オーディションにかけていく二人を見守りつつ、
プロデューサーは二人が合格することを疑っていなかった。
周りを包む異様な気配には、全く気がつくことなく。
| Copyright 2007,08,27, Monday 05:24pm 瀧義郎 | comments (0) | trackback (0) |